強迫性障害とは

強迫性障害は、強迫観念と強迫行為に特徴づけられる疾患で、有病率は1〜2%と報告されています。
平均の発症年齢は20歳前後で、全体の7割近くが25歳以前に発症するといわれています。

不潔恐怖(細菌感染や科学物質などの汚染に対する恐怖)、確認・加害恐怖(火の元や鍵を開けっ放しで外出してしまったのではないか、他人や自分を傷つけてしまうのではないかという心配)といった強迫観念と、その恐怖感を払拭するための代償行為を強迫行為と言います。
患者さん自身も無駄な考えや行為だと頭では理解しているものの、強迫観念という心配や疑念、不吉な予感などによって思考が支配されてしまい、それを振り払うために強迫行為を繰り返してしまいます。
同行為によって不安を打ち消したつもりでも、しばらくするとまた強迫観念が浮かび上がってきて、また強迫行為を繰り返すという悪循環に陥ります。

例えば、外出をする際に普通の人であれば一度戸締りを確認すれば安心して出かけるようになるわけですが、強迫性障害の患者さんでは、1度確認しても再び強迫観念が募ってしまい、それを払拭するためにもう一度強迫行為を行います。
これで安心かと思えば、また少し時間が経過すると強迫観念が現れて、強迫行動を繰り返す――。
このやり取りで1時間ほどを戸締まりの確認に費やしてしまうため、学校や職場に遅刻する、あるいは外出そのものを諦める、など日常生活に支障をきたすようになります。

原因については、完全に特定されていません。
ただ最近になって、脳内の神経伝達物質のひとつであるセロトニンの異常が指摘されるようになりました。
また、本疾患は、前兆もなく、突然発症するようになりますが、その多くは何らかのストレスを感じる出来事があってから起きると考えられています。

強迫性障害でよくみられる症状

  • 汚れや細菌汚染を恐れて何度も手洗いや洗濯、入浴などを繰り返す(不潔恐怖)
  • 何度も何度も窓や玄関のカギ、ガス栓、電気器具のスイッチなどを確認する(確認行為)
  • 誰かに危害を加えたのではないかと心配になり、通って来た道を戻って確認する(加害恐怖)
  • 自分の決めた回数や手順に沿って物事を行わないと不安になり、それに従う(儀式行為)
  • 物の位置や左右対称性、数字などにこだわりがあり、それから外れると不安になる(物の配置や対称性、数字などへのこだわり)

など

治療について

治療は主に薬物療法と精神療法(曝露反応妨害法)の併用です。

薬物療法

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を中心に使用していきます。
十分な効果を得るためにうつ病よりも高用量を要する場合もあります。
効果が不十分な場合は、気分安定薬(炭酸リチウムやバロプロ酸)や第二世代抗精神病薬を強化療法として併用します。

精神療法(曝露反応妨害法)

薬物療法が奏功しない場合、認知行動療法のひとつでもある曝露反応妨害法を選択する場合があります。
これは、強迫性障害に対してエビデンスが最も確立している治療法です。
これまで恐れ回避していたことに敢えて直面(曝露)し、不安を軽減するための強迫行為をできるだけ行わないこと(反応妨害)で、実際には不安や苦痛が低下していくという体験を繰り返すことで症状の軽減を目指します。